私たちの技術 --Tk-SPとは--

技術の成り立ち
― 極限環境微生物を「天然の設計図」として ―
Tk-SPは、生育至適温度85 °C、最大100 °Cで生育可能な超好熱性古細菌(始原菌) Thermococcus kodakarensis KOD1 株1),2) から単離されました。3)
Morikawa, M., Izawa, Y., Rashid, N., Hoaki, T., and Imanaka, T.: Appl. Environ. Microbiol., 60, 4559–4566 (1994).
Atomi, H., Fukui, T., Kanai, T., Morikawa, M., and Imanaka, T.: Archaea, 1, 263–267 (2004).
Foophow, T., Tanaka, S., Koga, Y., Takano, and K., Kanaya, S.: Protein Eng. Des. Sel., 23, 347–355 (2010).
T. kodakarensisが極限環境に適応するために、本菌のタンパク質は高温・化学的ストレスに耐える分子構造を進化的に獲得しています。subtilisin様プロテアーゼは、洗剤・食品・医療など幅広い産業分野で利用されてきましたが、一般的な酵素は 高温・界面活性剤・変性剤条件下で失活する という制約がありました。
研究チームは、超好熱菌由来酵素を
- 「天然の構造デザインの手本」として解析
- Tk-SPの成熟化機構、立体構造、安定化要因を分子レベルで解明
することで、世界最高レベルの耐熱性と化学耐性を併せ持つプロテアーゼとしてTk-SPの特性を明らかにしてきました。4)
4) Foophow, T., Tanaka, S., Angkawidjaja, C., Koga, Y., Takano, K., and Kanaya, S.: J. Mol. Biol., 400, 865–877 (2010).
3つの特性
1. 90 °C以上で最大活性を示す超耐熱性

Tk-SPは、一般的なバクテリア由来subtilisinが失活する温度領域を超え、90 °C以上でも高い活性を維持します。これは、酵素反応速度の向上、基質溶解性の改善、微生物汚染リスク低減といった産業的メリットにつながります 。
2.界面活性剤・変性剤に対する高い耐性


Tk-SPは、幅広いpH領域、5% SDS、8 M Urea、6 Mグアニジン塩酸塩など通常タンパク質が完全に変性する条件下でも不可逆的な変性をしません。この特性により、高温洗浄、強力洗浄剤との併用、特殊洗浄用途が可能になります。
3.Ca²⁺非依存的な安定性
近縁のTk-subtilisinとは異なり、Tk-SPは Caイオンに依存せず正しく折りたたまれ、安定な構造を形成します。そのため、キレート剤を含む洗浄剤配合系など、従来酵素では使用が難しかった条件でも利用可能です。。
4.独自の構造による高い分子安定性
Tk-SPは、subtilisinドメインに加えてC末端側にβ-jelly rollドメインを有し、この領域に形成されるCa結合サイトが分子全体の安定化に寄与しています。この構造的特徴が、Tk-SPの高い耐熱性・耐薬品性の基盤となっています。
Tk-SPの応用
― 「使えなかった条件」で使える酵素 ―
100℃で加熱しながら材料を分解できる。
難分解タンパク質の構造を変性剤で不安定化させながら酵素分解する。
機器の部材や繊維の奥など、微細構造の中まで浸透して酵素分解する。
界面活性剤が脂質の混在する材料の中で酵素とタンパク質の接触を助ける。
こんなことが可能になるプロテアーゼです。まだ見ぬ新しい酵素の可能性が拡がっています。
Tk-SPで一緒に新しいことを始めてみませんか。
